2016年03月12日

「固定種」や「F1」についての大きなお世話な解説

みなさんこんにちは。今週は種もみの準備に入りました。と前ふりしつつ、いきなり話は斜めへ行きますが、最近は、遺伝子組み換えやTPPの件もあって「タネ」への関心が高まってますね。野菜を作るなら自家採種しちゃうなんて当たり前の世の中で「固定種」とか「F1」って何?なんて人に聞けない雰囲気ですよね。そんなわけで、今回は、その辺まだよくわからないというごくわずかな方々のためにちょっとした解説をしようと思う次第です。


まず、「固定種」と「F1」について。「岩波生物学辞典第4版」を見ますと、「固定種」というコトバはでてきませんが、「固定」ならあります。「生物の系統やメンデル集団で、一つの遺伝子座の特定の対立遺伝子の割合が100%になること。」とあります。なんのこっちゃと思われたあなたのために血液型でたとえてみましょう。日本には4種類の血液型があって割と均等に分布していますが、国によってはかなり偏りがあります。たとえば南米のグアテマラでは、95%O型だそうです。で、例えば、O型が100%の国があったとしましょう。右をみても左をみてもO型(恐ろしい・・・)。当然すべてのカップルはO型同士であり、その子供もまたO型になります。この状態が固定です。血液型という性質について遺伝的に固定されちゃっている状態です。それ以外の遺伝子はばらばらでもかまいません。血液型については遺伝子が固定されているのです。人間の場合、血液型は輸血のときに問題になるだけで、それぞれの個人の性質を決めるそれほど重要な要素ではないでしょうし、そもそも、おかしな思想でもないかぎりどんな遺伝子についてもそれが「固定」されていることに興味はありません。それとはちがって、野菜などの場合には、色とか形とか味とか、価値につながる性質が重要なので、それを決める遺伝子が固定されていて欲しいわけです。この状態になっているのが固定種なのです。


この国にあるときB型の人がどこからか流れ着いたとします。この人はB100%の国からやってきた生粋のB型です(これまた恐ろしい)。そしてその国の誰かと結ばれました。そうするとその子供はB型になります。ただし、この子供はB型の遺伝子とO型の遺伝子を受け継いでいます。この子は、B型特有の聡明さとO型特有のほがらかな性格で誰にも好かれたりしています(もちろんフィクションです)。この子がF1です。さて、この子が自分の伴侶を探していたら、なんとやっぱりB型国の出身者を片親にもつ素晴らしいF1に出会ってしまい、これが運命というものかといって結ばれたとします。しかしながら、その子供のうち親と同じような性格のものは二人に一人しかうまれてきませんでした。めでたしめでたし?さて、たとえ話でかえってわかりにくいという批判を無視しつつ、シンプルに言い直すと、「遺伝的にかなり違った品種同士を交配させたらできた何かよい特性をもったもの」がF1ということになります。


血液型の説明では、それぞれの親の性質のいいとこどりみたいな表現をしましたが、雑種強勢といって親の性質をさらによくした性質をF1がもっていたりするらしいです。そんなわけで、近年では、野菜のタネを買いに行くと、大方はF1とか交配種とパッケージに書いてあります。そのF1のタネをまいて野菜を作ると(ちゃんとやれば)予定通りの野菜になりますが、そこから種をとって次の年にまいても同じものはできません。遺伝的にばらばらになるからです。F1の問題点といわれるのは、まさにこの点であって、農家は自分で作った野菜から種をとっても次の年に同じ野菜がとれない、毎年毎年、タネのメーカーから買わなくちゃいけないということになります。


さて、ここまでで固定種やF1についてはよくわかりました。でも、米作っているくせに、なんだか野菜、野菜といっているけど米はどうなのよと思われたあなたのために、米の話をしましょう。実をいうと、米づくりの現場では、あんまりF1が使われていません。とはいえ、米ではF1が無縁というわけでもありません。私たちが食べている米、たとえばコシヒカリとかひとめぼれといった品種は昔からあったわけではなく、何かの品種を交配させてつくったものです。コシヒカリでいうと農林22号と農林1号という品種を交配しています。なので最初に2つの品種を交配させたときには当然F1の子供ができます。米の品種改良の場合、このF1はゴールではなく、スタート地点です。ここから何代も選抜とか戻し交配というのをやって、特定の遺伝子を固定させていきます。戻し交配をO型国の例で説明すると、B型異邦人の孫の中でB型の性質をもっている子供を選び、またB型異邦人との間に子供を作るということを繰り返すことになります。もう人のたとえ話にするのは限界になりつつありますが、そういうことをし続けたら、血液型についてはO型の遺伝子が追い出されて、生粋のB型(BB型)になる。つまり固定されるわけです。ここまで来たらわざわざB型異邦人を連れてこなくてもその集団から生まれる子供はいつもB型です。血液型以外の性質についてはO型国らしいものもあったりしますが、血液型はB型です。とういうわけで、コシヒカリを育ててとったタネ(種もみ)を使って次の年にイネを育ててもちゃんとコシヒカリができるのです。コシヒカリに必要な性質を決める遺伝子は固定されているのです。


なるほどーじゃあコメ農家は毎年自分のところでとったタネを使って米を作ってるんだね。素晴らしいね。と思った方。すみません。コメ農家も種もみ買っているのです。これについての言い訳を今から考えるので続きはまたこの次に。ではでは。

posted by ばんばスタッフ at 19:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 農業一般
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