2016年03月04日

春の準備作業開始です

みなさんこんにちは。3月になってしまいましたね。石川では、冬も終わりかけになってから雪が結構ふったものの、確実に春に向かっている今日この頃です。水稲農家はこのあたりから5月の田植えに向けていろいろ忙しく、気ぜわしくなってきます。時々、田植えと稲刈り以外にやることないよね?みたいなことを言われたりしますが、苗を育てるための設備の準備や種まき、育苗、田んぼの水回りのチェックと荒起こし、代かきなど、田植え前の仕事もひとつひとつどれも重要です。

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写真 芽を出させるための温室を作っているところ


ところで、イネに限らず農作物の栽培では、苗半作とか苗七分作といって苗づくりがもっとも重要といわれています(今、ひとつひとつどれも重要といったばっかりですが)。実際、苗が良くないと、後でどんなにがんばってもリカバリ不能という場合もあります。はじめ良ければすべてよしという言葉がありますが、はじめ悪けりゃ後大変という方が真理じゃないでしょうか(まあ、はじめからすべてうまくいったまま終わる人生なんて面白くないですよねー。はい負け惜しみです)。話がそれましたね。私どもの田んぼでは、自然栽培用も含めすべて田植え機による機械植えです。機械にマット苗(箱苗)をセットして植えます。この箱は、30cm×60cmの大きさで、何千粒もの種もみがまかれるわけですが、箱の中でこの苗はいいから使おうとかこれはダメとか選ぶことはできません。人間と違って機械は手加減なしで植えるのでマット苗全体の出来不出来がちゃんと植わるかどうかに直結するわけです。苗箱の中で苗が少ないところと多いところがあったりすると、そのまま田んぼで苗が植わっているところと植わっていないところができてしまいます。自然栽培用の床土には、山土にボカシを混ぜたものを使っているのですが、これがいろいろやっかいだったりもします。たとえば、ボカシに使っているモミガラはふつうの床土からみるとやや粗大なのでヘラで平らにしようとしてもモゲモゲっとして平らになってくれません。それにモミガラが邪魔して水を吸わないと水たまりができて、上からまいた種もみが偏ってしまったりします。そもそもボカシ自体が均一に発酵していないと発芽やら生育がばらついたりしてしまいます。そんなことにならないように願いたいですが、ちゃんと苗になるまではらはらです。


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写真 こんな風に水がひかないでたまっちゃうと困ります。

さて、説明なしでボカシって言葉を使ってきましたが、巷ではこの言葉普通に使うんでしょうか?少なくとも自分の学生時代(約四半世紀前)、自分は知りませんでした。今となっては、「うちのボカシはさあー」みたいなことを言うとちょっとかっこよくない?とか思ったりするのですが、どうなんでしょうね。今回使用したぼかしは、去年の11月頃にモミガラと米ぬか、水をまぜ2か月くらい発酵させたものですが、菌が分解に使う窒素分と分解する炭水化物があればなんでもボカシになります。家庭で作るコンポストもボカシですね。ボカシって変な言葉だなと最初のころ思いましたが、実際自分で作ってみると、なるほど、最初は明るい色でしっかりした形の材料(うちではモミガラ)がだんだん「ぼけて」きて土のようになってきます。


このボカシを作るのは様々な菌類です。ボカシを作るとき、特別よそから菌を投入しているわけではないので(もちろん投入してもいいです)、そのへんの奴らが勝手にやってきて勝手に働いてくれます。まさに小人さん。面白いなと思うのは、発酵の初期からだんだん働く菌類が変わっていくということです。最初のころは、植物繊維を分解して糖を作る連中。次にその糖を使ってタンパク質を分解する連中。その途中でやたら温度を上げたがる連中とか水が多すぎたときにがぜんと頑張りだす連中とか(こやつらにはがんばってほしくない)。そういうことは匂いとかでなんとなくわかります。こちらとしてはボカシの温度をみながらそやつらをなだめたり(切りかえし)すかしたり(水追加)してボカシの完成へもっていくのです。

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写真 ボカシ作成中(去年の11月下旬ごろ)。まだおいしそうな匂いがします。


こういうことをしているといつも思うことがあります。「もやしもん」の主人公みたいに菌がみえたら面白いだろうなあと。なんとなくじゃなくもっと親しくしたい。彼らは目には見えなくても確実に働いています。僕らは知識として、そういう世界があることを知っているのでそういう見方をしますが、昔の人たちにとってはまさに魔法のようなできごとだったでしょう。ところが、近年では、いろんな分析手法が発達してこの神秘の世界にかなり肉薄できるようになっているのです(お金がかかりますが)。今後は、ボカシに限らず、自然栽培の土がどのように変化したり維持されたりしているのか菌類の世界からわかってきたらいろいろ面白いに違いありません。農業の現場ではこの見えない世界の住人の働きは非常に重要です。コンピュータに例えると、OSの一部といってもいいんじゃないでしょうか?農業者と菌とのかかわりがもっと緊密になれば明日の農業が拓けてくると思います。ずいぶん前になりますが、上野の国立科学博物館で「もやしもん展」をやっていました。そこで来場者に子供の多かったこと。もやしもんの「醸すぞー」キャラクターが人気だったからでしょうけども、菌類への興味をもつきっかけになればいいなと思ったものです。私たちは、石油文明の真っただ中に生まれ、そこにどっぷりつかっているわけですが、この「火を使わない」文化を大事にしていきたい、大事にしていってほしいと思います。


さてさて、今年使用する苗箱は2月中にすべての土を詰め終わりました。9千枚あまりの苗箱のうち、300枚ほどが自然栽培用の苗箱です。ボカシの中に住んでいる菌類とともに出動待ちです。


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posted by ばんばスタッフ at 07:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 農業一般
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